遺構撮影の安全対策     (村井伸也)

 遺跡の写真撮影には全景写真に限らず、ほとんどの撮影機会で撮影高度を確保するため「タワー」、「ローリングタワー」、「やぐら」、「ステアウエイ」などという足場が欠かせない。重要な撮影機材である。足場の使用にあたっては常に倒壊や落下といった事故の危険が伴っている。かといっても現在、他にこれに代わるこれといった物もない。これを「いかに安全に使用するか。」しか手立てがないと言えるだろう。
 たいしたことではないが、(財)京都市埋蔵文化財研究所ではこれへの対策としてひとつの手段を講じているのでここで紹介する。
 各現場ごとにアルミ製の「ステアウエイ」5段階みを1セットとして配置している(現在13セット)。
 それぞれには写真1にみるように付属の倒壊防止用としての「支柱」がついている。しかし撮影者、組立者にとっては、これだけでは風の強い日や設置面が不安定な状況等々では、はなはだ頼りないものでもある。そこで京都市では、市街地の発掘調査が多いために安全対策上、各現場にはフェンスが設けられており、フェンスの倒壊防止にフェンスとフェンスを連結する鋼管6mものを撮影時だけに限って取り外し、下から3段目に自在金具を使って四方に支柱として取り付けているのである(写真2)。これで大袈裟にに言えば「5段の上で、故意にゆすっても揺れない。」状況ができ、撮影者の落下、倒壊の精神的不安も取り除くことができる。今までの付属の支柱は3段目までを立てるためのものであり、それよりもこの鋼管パイプが役目を果たすことになる。撮影のみならず発掘調査は安全が第一である。一度、使用されることを勧める。


                  〈(財)京都市埋蔵文化財研究所 むらいのぶや〉

 
     写真1 一段目の支柱が付属品 
   
        写真2 自在金具の利用