【留意事項】
― 水洗の容器と水の流れ ― 研究会白黒写真部会
水洗という作業は、通常の現像時の水洗作業と少し違いがあります。
 35mmや120サイズのフィルムが、長いロールのままの切られていない状態であれば、水洗は非常に簡単な作業です。しかし、再水洗が必要な状況での35mmや120サイズのフィルムの多くは、数コマ単位で切られて細長い短冊状になっています。このようになったフィルムの両面が一定時間、淀みなく均一な流水に浸る状態を用意する必要があります。そのため、いくつかの留意事項があります。


水洗用のバット状容器
再水洗に必要な容器は、一般的な写真用バットよりも浅いものが適します。深い容器を使うと、下記のような問題が起こります。
悪い水洗例 1悪い水洗例 2
水面に直接注がれた水は、矢印のように容器の上部で勢いよく動きながら、排水口に向かって流れます。 矢印のない部分では、水は淀んだり緩やかになります。 容器の底部から僅かに浮かして平面に置かれたフィルム面には水の流れはほとんどありません。 容器の底部までホースで注がれた水は、矢印のように容器の底部から勢いよく排水口に向かって流れます。 矢印のない部分では、水は淀んだり緩やかになります。 この場合も容器の底部から僅かに浮かして平面に置かれたフィルム面には水の流れはほとんどありません。


「悪い水洗例 1」、「悪い水洗例 2」のようにいずれも深い水洗容器を使うと、水の流れは下から上へと動きます。水洗効率が低く、水と時間の無駄になります。

ここで重要なのは次の三つのポイントです。
1.浅い水洗容器
2.フィルム片の長さの1.5倍以上の容器の長さ
3.緩やかに容器の底部に注がれる水

この条件が揃わないと、フィルムの両面を水が均一に流れません。 この条件を揃えた水洗例が、下記です。




クリップ
 フィルムが水に流されないためのおもり、さらに短冊状のフィルムと容器の底部との間に隙間を作り、そこに水が流れるようにする役割をします。そのため再水洗用のクリップは、水の流れを阻害しないような小型で、噛み合わせ部分によってフィルムの損傷を最小限とするものが必要になります。従って通常のロールフィルム用の乾燥クリップは使用できません。


 以上のような理由から、作業手順の写真にあるような、浅いバット、ホースや塩ビパイプのジョイントを用意するのは、多くの再水洗作業にとって重要なことなのです。これらを用意するのは面倒に思われるでしょう。しかしこれらを最初に用意すれば、節水ばかりでなく時間の節約となります。