トップページ > 記事閲覧
痛んでしまったネガやプリントの救済と保存
日時: 2004/12/24 15:07
名前: ガイア

はじめまして。知り合いの博物館学芸員から相談された内容です。

地元の研究家の方から30〜40年位前のものと思われるモノクロネガ(35ミリ)と、モノクロプリントを大量に寄贈されたそうです。頂いた箱には遺物や図面も一緒に入っており、すでに虫にやられひどい状態になっていたようです。相談を受けた時には樟脳の臭いがプンプンしておりました。
35ミリモノクロネガは、写真屋で入れてくれたネガ袋(グラシン紙)に入れられたままで、やや湿気っぽく思えました。フィルムの表面は一部白濁したような感じで、付着物(カビ?)がついているものもあるようです。
一方モノクロプリントは、プリントのみでネガはなくなっています。印画紙がだいぶ痛んでいて、画像がかなり薄くなってきている状態です。
どちらも記録写真資料としてかなり貴重なものが多く含まれていると思われます。

このネガを救済するにはどうしたらいいのか?、プリントに今かすかに残っている画像をどういう形で保存していけばいいのか・・・どうぞアドバイスをお願いいたします。ちなみに、このための予算は殆どないそうです。
メンテ

Page: 1 |

Re: 痛んでしまったネガやプリン ( No.1 )
日時: 2005/01/11 16:12
名前: すんげる

原板のことは別の(HカラーのKさんが詳しい)方にお任せをするとして。
以前、私は古くは大正時代のもの、主に昭和に撮影されたプリントの再生について少々経験したことがあります。
その時のことを。
まずオリジナルプリントを4×5モノクロフイルムで複写をし、現像処理します。その後、現状維持としての現状に忠実なプリントを焼きます。それとは別にオリジナルより綺麗に見えるようコントラストや濃度を調節したプリントもつくります。※この時は4×5しかなかったので4×5です。現板が四ツ切など大きければ8×10と4×5の両方がベストでしょう。
次に、綺麗に見える方の焼きつけプリントをレタッチでモノクロプリントをスポッッティングで除去していき、再度複写をしました。
現在では、まずプロフォトCDにし(64ベースで)、フォトショップでプリント表面にある傷やホコリをとります。小さい傷やホコリはダストスクラッチというツールで簡単にとれます。破損している部分があればその他のツールなどで補填します。部分的にうすくなっていればそれも強調処理をほどこします。最終的には加工が終了したデータをLVT出力でフイルムにおとし、そのフイルムからプリントを焼き完成です。すなわち、手許には現状のネガフイルムとプリント、補正したモノクロフイルムとプリントが残ります。
複写は通常の特別なものではありませんが、最初の現像処理が自家処理でないと難しいかもしれません。やや軟調気味が後々の焼きつけ時に調子がだしやすいからです。硬調だと黒(シャドー部)の調子が出にくくなるからです。
それにしても予算がないのは“ツライ”ですね。
でも将来には現在我々が日々撮っている写真が今、お困りの状況に、いずれはおちいるのですよね。その時数だけある「しょーもない写真」はどないするんでしょうね。この作業をやっていて、そういうことも含めて《文化財写真とはなんぞや!》を様々考えたことを懐かしく思い出します。今日、フォトショップで簡単にできるようになったもんです。加工だけは!!
メンテ
Re: 痛んでしまったネガやプリントの救済と保存 ( No.2 )
日時: 2005/01/11 21:47
名前: TAMA< >

まず、至急ナフタリン等の薬物から隔離してください。カビの発生しているモノは分けてください。
プリントとネガも分けます。
次に必要なものと必要でないと思うモノを区分けします。
予算がないとここで終わりとなってしまいますね。
B/Wフィルムで複写するか、プリントはスキャンするか、photoCD にするかにしても、金額かかります。

・ネガを救済するには
 状態によりますが、30〜40年前でしたらそれほど昔ではないので、カビがなければ、単ハイポで再定着して、水洗→水洗促進浴→水洗30分
乾燥後はアーカイバル対応のネガケースに保管。
低温低湿の保管場所へ。おそらく6コマ程度に切り離されているので、手間は大変ですけど。

カビがある場合は程度によって異なるので、専門家に任せる。画像を救って元ネガは廃棄するならアンモニア処理などが可能。元を生かすには相当の金額必要でしかも完璧には無理。

・プリント上の画像を生かす
 すんげるさんのコメントも参考に。
 私は民生用のスキャナでしっかりしたデータにするのが安価と思うけど。実売5〜6万の最新スキャナの性能はかなりのモノです。ただし、とんでもない時間がかかる可能性大。データが良ければ必要ならそこからフィルム落としも可能です。これもかなり高額になるけど。本当に重要な世界に一枚しかない画像なら安いモノかも。

メンテ
Re: 痛んでしまったネガやプリントの救済と保存 ( No.3 )
日時: 2005/01/12 02:00
名前: Hカラー 川瀬< >

30〜40年位前のものとのことですが、本当にこの時代のものであればフィルムもプリントも大きな問題は無いでしょう。
フィルム原板を長期に残すのであれば、カビや汚れを取り除き長期保存包材に収納し低温・低湿な保存環境で保存してください。カビや汚れを取り除くには専門的な水洗処理が望ましいですが、簡易にという事であればフィルムクリーナーなどで注意深くクリーニングすることもでも一定の効果があります。
また、プリントもこの時代であれば銀ゼラチン印画でしょうからかなり堅牢なはずです。クリーニング処理を行い、無酸のアーカイバルティッシュやタトウ、エンベロップといった長期保存用の包材に収納し保存されればかなり安心できます。
しかし、30〜40年位前という前提が心もとないということであればいろいろなケースを考える必要があります。
フィルムではベース素材の問題です。フィルムベースには硝酸セルロース、セルローストリアセテート、ポリエチレンテレフタレート等の素材がありますが、最も注意を要するのが硝酸セルロース素材です。これは1950年ごろまで使われたケースのある素材ですが、ナイトレートフィルムとも呼ばれ自然発火(環境が揃えば37度で発火)、加水分解等の危険性があります。もちろん水洗は不可で、多くの場合複製を作り原板は処分するほうが良いでしょう。見分け方は、まずフィルムエッジのsafetyの印字の有無を確認ください(硝酸セルロースの危険性に比べ安全フィルムの意から、以降のフィルムにはsafetyの印字が入っています)。その他、観察による判断方は、表面がつるつるしている(少し濡れたような光沢感)、べたついている(多くは加水分解の前兆)、飴色に変色等で判断します。しかし、いずれも専門性は必要です。 また、科学的な判断手法もありますが危険物指定の薬品を使用することになりますので容易ではありません。
同様にプリントでは、時代によっては鶏卵紙・無光沢コロジオン焼き出し印画・ゼラチン現像紙等の可能性も考慮する必要があるかもしれません。判断は専門家に任せたほうが良いと思いますが、硝酸セルロースのような危険性はありませんので、とりあえず、刷毛などで埃を除き複製を作り、先にあげた保存包材に収納し低温・低湿で光にさらさないような環境で保存されれば良いでしょう。
複製の作り方などは「すんげる」さん、「TAMA」さんのコメントを参考にされれば良いのではないかと思います。
メンテ
Re: 痛んでしまったネガやプリントの救済と保存 ( No.4 )
日時: 2005/01/12 02:00
名前: イモ< >

予算の有無も大きな問題ですが、ガイアさんの書き込みでは、ネガにカビが発生しているのかどうか判断できません。
またフィルムの表面の一部が白濁とあります。これはカビとは思えないからです。古くなった白黒ネガティブやのプリントの表面に、ゼラチン中にあった銀が遊離して浮き出てくる現象があります。この状態を反射させると、鈍い金属的な反射があり白濁しているように見えることも考えられます。
それとも拭い取ることのできる汚れかも分かりません。

カビはフィルムやプリントの表面に、不規則で細かな糸くずの集合のように見えます。
カビは除去することができますが、カビがネガティブやプリント表面に発生したパターンは残ってしまいます。このパターンが再現する画像にあたえる影響が無視できなければ、銀塩写真手方法でも、デジタル手法でも、手間のかかる修整が必要になります。

まず白黒ネガティブについて、「記録写真としてかなり貴重なものが多く含まれていると思われます」とあります。そのことから、まだ写っているものを吟味しないと分からないという状態に思えます。ネガティブの画像を充分に評価できる状態にしなければ、今後の展開が不明ということでもあります。
TAMAさんが指摘されているように選別前の状態です。
安価に選別をするには、スキャナーで35mmのフィルム画像を取り込み、PCで観察して評価するのがよいと思います。

スキャナーで取り込む時にネガをクリーニングします。あるいはご自分で引き伸ばしができる状態でも同じですれ。
このクリーニングにイソプロピル アルコール(別名イソプロパノール)を使うことを奨めます。
病院等で消毒に用いられますが、エタノールとは異なります。イソプロピル アルコールは薬局に依頼すれば500mlくらいのビン入りが千円未満で入手できます。依頼するときは、必ずイソプロピル アルコールの含有率が100%のものを指定してください。含有率が低いと水分が多く、フィルムのクリーニングに適しません。
カビはイソプロピルアルコールに触れると死滅します。35mmフィルムは、乳剤面(画像形成側)にしかゼラチンが塗布されていません。もしカビがベース面に発生していても大概はきれいにとれてしまいます。カビが乳剤面に発生している場合は、死滅させることが出来ても、ゼラチンを浸食した痕跡が残ります。
いずれにしてもカビをこれ以上増殖させないためにも、イソプロピルアルコールでのクリーニングが有効です。
クリーニングでは、カビ以上に注意をする必要があるのは、フィルムの表面の変質です。
先程述べた銀のフィルム表面の析出は非常に脆く、水分を含んだもので拭うと取れてしまうこともあります。柔らかい脱脂綿等にイソプロピルアルコールを浸して軽く拭い取ります。
ティッシュペーパーは細かな繊維が抜け落ちるため不適です。
ネガティブの中には、不要なコマもあると思います。クリーニングを開始する前に、必ず不要なコマを使って、イソプロピルアルコールでのクリーニングのテストをしてください。不要な汚れやカビだけが除去でき、画像にダメージを与えなければこの方法が有効といえます。
クリーニングしたネガティブは長期保存に適した包装材に入れ、光を遮断した乾燥した場所に保存します。
それからイソプロピルアルコールはプリントのクリーングにも使用できます。これも不要と思われるプリントでテストしてみてください。
プリントやネガティブの銀の析出物はそのままでも、スキャナーや引き伸ばし機を通じて得られる画像への影響は少ないことが多いと思います。

先ずは画像を評価し、重要という判断であれば、ネガやプリントを判断できる人に見せ、必要な方法と予算を講ずることがよいと思います。できだけ早くに本格的な救済や保存を講ずることが大事と思います。
メンテ
Re: 痛んでしまったネガやプリントの救済と保存 ( No.5 )
日時: 2005/01/15 10:39
名前: ガイア

すんげる様、TAMA様、Hカラー川瀬様、イモ様、懇切丁寧なご回答、ありがとうございます。

皆さま方の助言は私どもにはやや難しい内容ですが、出来るところから順次やってみたいと思います。プリントは来月に公開して、研究者や当時を知る方々から画像内容の重要度を判別して頂く機会をもつことになりました。
それとやはり、ネガやプリントに対して判断の出来る方に一度きちんと見て頂こうと思っております。

これからも、お世話になる事と思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
メンテ

Page: 1 |

題名 スレッドをトップへソート
名前
E-Mail
URL
コメント中には上記URLと同じURLを書き込まないで下さい
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

   クッキー保存